スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大地の子 山崎豊子

戦後 中国に残された 孤児の苦悩と日本人への反感。
差別する中国人や助けようとする中国人に彼の人生は翻弄させられる。
彼の目を通して 近代化する中国を描き出す小説である。

大地の子〈1〉 (文春文庫)大地の子〈1〉 (文春文庫)
(1994/01)
山崎 豊子

商品詳細を見る


【あらすじ】
終戦後の満州で、松本勝男は 迫りくるソ連軍に 祖父と母を殺され妹とも生き別れてしまう。
過酷な運命にさいなまれて、記憶喪失になり人買いに連れ去られ中国の農家に売られる。
やっとのことで脱出したが、また人買いに捕まりそうになり、それを救ったのが陸徳志夫妻であった。子供のない陸夫妻は、一心という名前をつけ 教育を施した。
その後、中国は文化大革命の嵐が吹き荒れ、一心も日本人ということで 労働改造所に送られる。5年後 陸徳志の働きかけや友人の嘆願でようやく開放され 改造所での命の恩人であった江月梅と結婚する。
後に日中共同事業の製鉄所建設プロジェクトに参加し、日本の東洋製鉄から派遣された所長松本耕次と合う。それがはるか昔に別れた父親であった。


【感想】
不毛地帯の出だしもかなり重いのだが、この小説の序盤ははるかに重い。
戦争が残した悲劇ともいえるのだが、満州に渡って残留孤児になった人のうち、幸せにも養父母に恵まれて育った人間がいる反面、この主人公のように、悪意に満ちた人買いにより奴隷のような生活を受けた人間がいると思うと本当に悲しいことだ。

この小説は、現代中国が歩んできた道を、残留孤児の視点からあぶりだそうという考えと、そこに生きた単体の人間の卑劣さや やさしさについて書いている。
共産党における文化大革命とはいったいなんであったのか、そこに生きる人がどう生きていたかが主人公の日本人であるがための労働改造所送りになる 差別的扱いに絡めて描かれる。

日中プロジェクトの中では、主人公が 派遣された日本の東洋製鉄の所長が実父であることがわかり、今までの生い立ちの中で、真に愛を注いでくれた養父母のことについて思い悩む。
まさに時代に翻弄されるのであるけれど、産みの母か 育ての母かということは、現代社会の中でよく起こりがちな出来事である。ましてや、中国の大地に残されて、過酷な運命をその人たちに助けられて今までの自分があったとも思えばどうであろうか。
やはり最後に、仕事を通して分かり合えた実父に 日本に戻ろうと言われても 「私は 大地の子です」といってしまうのではないだろうか。

山崎豊子さんの小説では、意外と最後が 報われる書き方をしていてこれはこれでいいなーと思います。もう今はあまり 残留孤児問題がとり沙汰されることはありませんが、やはりこの時代に生きた人間にとって、夢の満州の 大きなバブルがはじけた後の喪失感とここでなくした命が、生きて再開することの難しさや感動を生んできたのでしょう。
今でも、中国人とし生きて、そして死んでいった同胞は多いと思います。
この人たちが、生きた歴史こそが近代史そのものだったといえるのではないでしょうか。

歴史は、昔のことを想像したり、英雄を思ったりすることも楽しいのですが、近代のことを検証したり、歴史が政治の都合によって よくも悪くも曲げられる現実を考えるのも有意義なことかと思います。
小説はあくまでも小説ですが、考えるヒントになることが非常に有効です。
批判もありますが、がんばって現代の問題提起をしてもらいたいです。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

pitschi

Author:pitschi
本を乱読する日々。
このごろテレビがつまらなくなったので
本を読んで 音楽聴いて PCしてます。

最新記事
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QRコード
SEO対策:無料
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。